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アカルイミライ 2002


★★★

黒沢清

オダギリジョー 
浅野忠信 
藤竜也


オダギリジョーってそつなく何者にでもなりきれるなぁ。
とは思ってたけど こんな初期からだったのですね。
同時に最近の余裕たっぷりの饒舌な演技と違って
自然で一生懸命な姿が 新鮮で可愛らしかった。

浅野忠信も刑務所の中での面会シーン 上手かったですね。はっとしました。
無表情だから見落としてしまいそうだけど 気遣い思いやりが随所に見え隠れ。

前半の窮屈で狂気に満ちた息苦しさが
後半 緩やかで温かみに満ちたものに変わって行く。

忠信の社会的不適応さはちょうど
猛毒のクラゲを水槽で飼って淡水に慣して行くという無理な行いに現れていて
忠信の死後 それを引き継ぎ淡水で生きれるクラゲを完成させてしまうところから
ジョーの迷走が始まる。



藤達也の元に身を寄せるも 自分を増々見失いながら
逃げ出したクラゲのためにせっせと川に餌を巻き続ける。
途中 忠信の亡霊がジョーの迷走を止めるため
ちょっとした悪戯をしに現れたことを切っ掛けに
藤達也と衝突し やがて許され
その触れ合いの中で 次第に目を覚まし始めるジョー。
遺された遺言の意味にもやっと気付き
増殖しながら川を下りやがて海に帰って行くクラゲを見届ける事で
彼の中からも毒が抜けていく。
行ってしまう淡水クラゲ(忠信の夢)を惜しむ藤達也に
いつか帰って来ますよ。そう言ってあげるジョーが好きでした。


とは言え、、
残された2人の暮らしは 最後の最後迄
捕まるんじゃないか(不法侵入後)
死ぬんじゃないか(クラゲを捕まえに行った時猛毒で)
殺されるんじゃないか(男子校生達の報復を受けて)と
ハラハラしどうしなんだけど
決して これ以上 悪い方には転がって行かない。
前半が前半だっただけに
命が保証されている という最低限の水準ですら 否 それこそが
許され開かれた アカルイミライに見えてしまうのでした。
藤竜也の「ずっとここに居てもいいよ。」「全部を許す」という言葉と共に。

報復どころかジョーの所為で受けた仕打ちすら楽しんでいた
高校生達の心の広さと云うか楽天的なトコにも
アカルイミライを感じずにはいられなかった。
by hudousek | 2007-07-06 16:52